スピン科学?そんなの聞いたことない?それもそのはず、スピン科学は、世界中の科学者が取り組んでいる最先端科学の1つ。今日も新しい発見が続く、物質の性質に関わる研究です。
なんだかよくわからないけど面白そう?
そんな好奇心旺盛なみなさんは、このページを通じて、スピン科学を楽しんでいってくださいね。
スピン科学のスピンってなんでしょうね?
スピンという単語から何を連想しますか?
「車がスピンする」とか、「フィギュアスケートのスピン」とかでしょうか?国語辞典をみると「旋回」なんて書いてありますね。物理学者は、スピンと聞くと、「電子の回転」だと思います。
電子ってなんだ?
大丈夫、後で説明しますね。
みなさんの身の回りを眺めてみてください。
どんなものが回転していますか?
車や自動車の車輪、扇風機や換気扇、コマなんかも回っていますね。
バスケットボールのシュートも回転が大事、野球の選手も回転を使って変化球を投げています。台風も回っていますし、海峡には渦が巻いています。こういう回転は、どの向きに、どれくらいの勢いで回っているかを知ることが大切です。
地球も回転していることを思い出してください。地球は南極と北極を軸にして、自転しています。この自転のおかげで、昼と夜があるんでしたね。でも自転が作るのはそれだけではありません。
磁石のN極が北極に、S極が南極に向くのは、ご存知ですか?
地球の自転は、地球内部の溶けた金属を動かして、地球を大きな磁石にしているのです。
地球の回転が、地球を磁石にしているとすると、同じことが磁石にも言えるのでしょうか?つまり、磁石が磁気を帯びていることは、何らかの回転が原因となっているのでしょうか?
その原因こそが、磁石の起源である"スピン"なのです。
では、磁石が何からできているか考えてみましょう。棒磁石を半分に割ると、どうなるでしょうか?
片方はN極だけ、もう一方はS極だけの磁石になるでしょうか?
そうはなりません。二つに分かれた棒磁石は、やはり棒磁石で、それぞれがN極とS極を持っています。
これを繰り返していくと、割っても割っても、S極とN極両方を持つ棒磁石ができます。これをどんどんと繰り返していくと、いつか磁石を作る原子に行き着きます。原子もやはりN極とS極を持つ小さな磁石です。
どうやら磁石の起源は、この原子の中の回転にあるようです。
では原子の中の回転とは何でしょうか?
物理学者が長年その正体を追ってきました。それは電子の回転、スピンです。
それぞれの原子は、中心にある原子核と、その周りを回る電子からできています。電子は物質の最も基本的な構成要素である素粒子です。この電子一つ一つが、実は自転しているのです。この回転をスピンと呼んでいます。公転と勘違いしてしまいそうですが、気を付けてくださいね。
回転は、回る向きと、回る勢いで特徴づけることができますね。
電子のスピンも同じです。
電子の回転の向きは二通りあります。右回りと左回り。これは自然ですね。でも、回る勢いは、ある決まった値しかならず、決して止まることがありません。
電子は、右回りか、左回りに、一定の速さで回り続けるコマの様なものなのです。
電子には個性があります。
電子がどこにいるか、電子がどれくらいの速さで動いているか、そして、どちら向きに回転しているかです。
この3つが全て同じ電子は、この世に一つしかありません。この全く同じ状態の電子が世界に一つしかないというルールは、パウリの排他律と呼ばれています。
電子にはドッペルゲンガーはいません。
さて、電子の性質を詳しく調べてみましょう。
電子の個性は位置と速さがありました。その位置を調べてみましょう。
測定をしてみると、電子は東に8mのところに見つかったとしましょう。
ところが、次に測定をしてみると、今度は北に3mのところに見つかってしまいました。何度測っても、電子の位置はバラバラと広がっています。どうやら電子の位置は測るたびに変わってしまうようです。
調べてみた結果、どうやら東西南北の10m以内の中にいるようですが、正確な位置は何度測ってもわかりません。
次に、電子の個性のもう一方、速さを調べてみましょう。
測定をしてみると、電子は東に5m/sの速さで進んでいるようです。
ところが、次に測定をしてみると、今度は北に3m/sの速さで進んでいるようです。何度測っても、電子の速さはバラバラと落ち着きがありません。どうやら電子の速さは測るたびに変わってしまうようです。
調べてみた結果、どうやら東西南北に5m/sの速さで動いているようですが、正確な速さは何度測っても分かりません。
さて、これまでに、電子の位置と速さは測るたびに値が定まらずにふらふらと変わってしまうことを知りました。
この位置のばらつきと、速さのばらつきには、実は関係があります。
位置のばらつきが大きいと、速さのばらつきが小さくなります。
逆に速さのばらつきが大きいと、位置のばらつきが小さくなります。
この位置と速さの測定結果がばらついており、そのばらつきの間の関係を不確定性原理といいます。この原理は、測定の結果、位置や速さが1つの値に定まらないという、普段の私たちの直観とは異なる結果を与えます。
この原理は、電子のような素粒子を扱う物理学である量子力学の、特異な性質です。
では電子は物質中をどの様に動いているのでしょうか?
電子は、物質の中を漂っていますが、その速さはできる限りゆっくりなほうが良いのです。
運動が早くなると、電子がもつエネルギーも大きくなります。
大きなエネルギーは事故のもとで、物理学では不安定だと言います。電子の速さをゆっくりにとどめておくためには、先ほどの不確定性原理から、電子は空間的に広がらなければなりません。
そのため、電子は物質中で、できる限り広がろとします。
物質の広がった電子と電子はいずれお互いにぶつかってしまいます。
電子同士がぶつかってしまうと何が起きるでしょうか?
パウリの排他律を思い出してください。
もし、二つの電子が同じ向きのスピンを持っていて、ぶつかってしまったら?そうです、同じ場所に、同じ向きのスピンが、ゆっくりした速度でいることになります。
これでは個性が同じ電子ができてしまいますが、こういう状況はパウリの排他律に反しますから、電子は広がれなくなってしまいます。
そこで電子は、できる限り広がってエネルギーを小さくするために、スピンの向きを逆向きに揃えます。そうすれば、同じ場所でもスピンの向きが逆ですから、どんどんと広がっていけます。
こうして、物質中で広がろうとする電子は、スピンの向きを互い違いに揃えて、より安定な状態を維持しています。
物質の中で電子は、パウリの排他律に従いながら、できる限り広がろうとしてお互いのスピンの向きを逆向きに揃えるのでした。
こうして物質中のスピンが全て揃うとどうなるでしょうか?
1千万京(1023)個という途方もない数の電子が、物質の中向きを揃えて回転しているのです。なんだかすごそうですよね。
実はこの電子のスピンが揃った物質が、”磁石”と呼ばれるものなのです。
スピン科学とは、物質の中のスピンを自在に操る科学です。
ナノメートル(10億分の1メートル)という非常に小さな大きさの磁石を作ることで、最近実現できる様になりました。
スピン科学の分野では、磁石の全く新しい性質が明らかにされつつあります。人間が磁石を発見してから4000年、電気と磁石の理論が作られてからおよそ150年が経とうとしていますが、今まさに教科書を書き換えるような発展が進んでいます。
スピントロニクスはスピン科学の生み出した新技術です。
みなさんの周りにある電化製品を思い浮かべてください。それらは電子(エレクトロン)の電気を利用して動くので、エレクトロニクスです。
スピントロニクスは、電気だけでなく磁気も利用した技術で、スピン+エレクトロニクスでスピントロニクスというわけです。
身近な例では、ハードディスクドライブに搭載されていて、みなさんの大切なデータの保存に役立っています。
スピン科学の大きな発見の一つがスピン流です。
みなさん電流という単語は聞いたことがあると思います。
電流は、電子がある方向に流れたときに生じる電気の流れです。
電子はスピンを持ちますから、電子が流れたら、その分スピンの流れができると思いませんか?回転が流れるなんて、とても不可思議ですね。
スピン流の発見は、回転の勢いが、流れとしてものの中を伝わっていくことを意味します。
このことは科学者たちに、全く新しい動力源の出現を予感させており、多くの人がその可能性に真剣に取り組んでいます。
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© 2016 Spin Science.
棒磁石を二つに割ると、どうなるでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?磁石をいくら割ってもS極とN極を分けることはできません。S極とN極は、いつでもペアなのです。
方位磁針を使うと、N極が北極、S極が南極を指します。このことから地球は大きな磁石になっているわけですが、その理由はなんでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?地球が帯びた磁気(地磁気)の正確な起源はまだ未解明ですが、その起源の一つとして、地球の自転が地球内部の溶けた金属を回転させることで磁場を発生させていると考えられています。
”スピン”と同じ意味を持つ言葉はどれでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?スピンは回転、旋回、渦といった回っているものを指す単語でした。物理学者は、特に電子の自転をスピンと呼んでいます。
磁石を割っていくと、最後は原子になるのでした。磁石の起源となる原子の中の運動とは何だったでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?磁石の起源は回転であり、それは原子の中の電子の自転でした。この自転をスピンと呼ぶのでした。
電子の自転スピンには、とっても不思議な性質がありました。それは何でしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?普通のボールの自転は、どんな方向にも、どんな速さでも回転できます。電子はそうではなく、回転の仕方が2通りしかありません。不思議ですが、自然が電子をそう作ってしまったのです。
電子は個性的な粒子でした。同じ場所で、同じ速さで、同じスピンの電子は存在しないのでした。このルールを何と呼んだでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?同じ電子がない、というルールは発見者のヴォルフガンク・パウリにちなんで、パウリの排他律と呼ばれています。
電子の様に非常に小さいものの世界では、日常からかけ離れたことが起こります。それはどんなことでしたでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?電子の様に小さな世界を扱う学問を量子力学と言います。量子力学の世界では、位置や速さを測定しても、測るたびに必ず値が変わってしまう原則があります。このとき、位置と速さの値のばらつきの間にある関係のことを不確定性原理と呼ぶのでした。
速さを持って、運動している電子には、運動エネルギーというエネルギーがあります。運動エネルギーと速さの関係はどんなものでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?運動エネルギーは、電子の重さに、速さを2回掛け算した量になります。運動の速さが速ければ速いほど、運動エネルギーは大きくなります。
物質は、原子が集まってできています。大体何個くらいの原子で出来ているでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?物質は途方もない数の原子が集まってでいています。大体1千万京個の原子でできています。
物質の中で、電子はエネルギーが低いほど安定になります。電子は運動エネルギーを下げようとするために、どうなるでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?不確定性原理に従うと、電子の位置のばらつきが大きければ大きいほど、速さのばらつきが小さくなるのでした。速さのばらつきが小さいということは、それだけ運動エネルギーが小さくなることになります。こうして、運動エネルギーを下げようとするために、電子は物質中で広がろうとするのでした。
物質が磁石となるためには、スピンの向きがどうなっていないといけなかったでしょうか?
さぁ!答えはどーれだ?磁石の内部の電子スピンは、非常に小さな回転です。この回転が、磁石という身の回りのサイズで感じられるためには、電子がスピンの向きをそろえることが必要です。
最後まで答えてくれてありがとう
えーじ
世界で最も磁石に詳しいスピン界最強の研究者。芸術と科学を愛し、クラシック音楽と物理に関しては、とてもウルサイ。
運動はちょっと苦手。
講演のために世界中を飛び回っている。
好きなもの:美味しいもの
嫌いなもの:本質的でないもの
しおみぃ
スピン界若手のホープ。
テニスの腕前は超一流。
バスケットボールもちょっとできる。
甘党。
日々「努力が足りない」と自分に言い聞かせながら、ストイックに研究中。
好きなもの:お菓子
嫌いなもの:なまけもの